び~めんぷろじぇくと「秘密」

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び~めんぷろじぇくと
 「秘密」
2017年12月24日 19時開演
富山県教育文化会館

ふたりの話題は、いよいよ作品へ。谷崎潤一郎の「秘密」という、日本の古典作品、とも言えるような時代の小説を舞台へと作りこんでいます。「はだしの青春」など日本の古い作品への造詣もある天神さんと、シェイクスピア、チェーホフといった海外古典作品を演ったことがあるのとえみ。ふたりは一体どんなことを感じたのでしょうか。

天神「作品的にはちょっと俺的には物足りなかったっていうか、
もっと観たかったなっていう。」


 

天神
小説を台本化してやってるわけだから、元々言葉が綺麗で、物凄い完成されてる綺麗な言葉。

のと
あれだけのものを短編にするっていうのは(谷崎潤一郎は)力がある作家さんだなぁっていうのは思った。

天神
作品的にはちょっと俺的には物足りなかったっていうか、もっと観たかったなっていう。

のと
すごくシンプルだったよね。

天神
そうなんだよね。時間も短かったし。60分くらいあるんだって思ってたら40分くらいで終わっちゃった。俺としては後20分頑張って欲しかった。

天神
演技に関しては、自分で作ってても思うのは、「方言」。言葉が綺麗なだけに、(イントネーションも)綺麗にしゃべって欲しかった。周りの人誰も言わなかったのかなって。それでいいにしちゃったのかなって。そこはどの劇団を観ても、富山弁がでたり、イントネーションがでたりとか「そこはまあいいんじゃない」ってしてるんだったらまあ別にいいんだけど、俺はあんまり好きじゃない。

のと
舞台がはっきりと東京だとかって明記されているのに、なまりとかが出るとね。

天神
地名出てるからね、阿佐ヶ谷とか。そういう設定でやってるのに、方言が入ってくるとちょっと邪魔になってくる。

のと
違和感だよね。違和感って、その、なんか「ん?」って思った時点で集中力が切れてるし、本筋じゃない所に気がいってるから、演出としては失敗だよねって、何を観に行っても思う。

天神
そうだよね。「訛ってるから変えてくれって。」そういう細かいところを指摘していくことって、地方でやる場合は凄く重要だと思うんだよね。

のと
それが演出じゃないんだったら、極力無い方がいいと思う。

天神
極力無い方がいいよ。見世物だからね。

のと
突然ね、ここ富山だったって(笑)なるじゃない。

天神
集中力が切れちゃうっていうのは、まさにそういう感じがあるじゃない。そしたらやっぱ、ちょっとしっかり見ようかなって思ってたのをくじかれるっていうか。

のと
それこそ最初言ってたように、せっかく前のめりで観てるのになぁっていう。

天神
あとは(台詞が)つっかかった時に、芝居が途中で(止まってしまった時間があった)……自分らもあったじゃん。3月(2017年の「みんなの宅配便」)の時にクシャクシャになったからー。すごい気持ちはわかる。★1

のと
なったよ(笑)止まったりとかしたよ。

天神
気持ちはわかるんだけど、でも、俺ら、気持ちは切らさなかったじゃん。雰囲気を壊さないように上手くつなげていこうとか、次の台詞を言ったりとかして、脳を動かす作業をするじゃない。

のと
絶対そこでテンションを切らさないっていうか

天神
それはやっぱ、お互いのスキルの問題もあるんだけど、今回はふたり芝居で、一人芝居×一人芝居っていうのをうたってるから、誰も助ける人がいなくて…。そこでやっぱ思ったよね、「頑張れ」と。

のと
うん、それは。みんな心の中で頑張れって思ってたと思うよ。

天神
でもそれは失敗だよね。

のと
お客さんに頑張ってって思わせるのは、演出として意図していないんだったら、それはちょっとダメだよね。

 

――関東で芝居作りをしていて地方に戻ってきたふたりならではの視点も。

 

天神「び~めんはね、俺次観たいと思った。」


 

天神
び~めんさんって毎回面白いことをやってるなって思うんだよね。インプロ(即興劇)★2をやったりね。自分たちにはできないじゃない、インプロ嫌いだしさ。

のと
やらない。それをやろうっていうのはすごいと思う。

天神
作品作りとしてすごく面白いことをやってらっしゃるのに、もっとそっちに力を割けばいいのにって。

のと
あー、一本の芝居を作りこむことに?

天神
一回、周りが観ても納得するようなもの、ミスのないものだったりとか。あとは何かな。せっかくいい感じの雰囲気の内容の中で、ズラシみたいなのが入ってたじゃない?

のと
元々の谷崎の文章にはない脚色的な。

天神
そうそう。そこがまあ即興とかをやってっていう、ちょっと現代チックな、そういうものをやってるニュアンスが入った要素だったと思うんだけど、俺的にはあれは、なくてよかったなっていう。

のと
うん。私もなんか急にやっぱり言葉の弱さを感じちゃって。それまでの谷崎の文体があまりにも強かったから、それが耳に残ってるとそれとどうしても比較しちゃって、あぁやっぱり言葉に、強い弱いってあるんだなって。

天神
あるある。やっぱりアングラ★3だったりああいうものだったりすると、言葉への、谷崎潤一郎への言葉の対抗で、自分の持てる言葉の美しさで、ユニークさを入れるだったりとか…

のと
あーなるほど、例えば現代の言葉の美しさとかで戦うとか…。

天神
急にこうね、下世話な感じになってしまうと、せっかくそれまですごいいい雰囲気で、結城さんがつくってた女性像とかっていうのが、悪い意味で崩れちゃうんだよね。あれなんだったの?ってどうしてもなっちゃうのが勿体ないなって。

のと
うん。

天神
結城さん自体はすごく上手な人だなって印象も受けたし。寺山さんはやっぱりこういう世界観が好きなんだろうなっていう、大事にしてんだろうなっていう、熱意みたいなのはすごいやっぱ感じたから。

のと
そうそう。ああいう世界観が好きとかっていうセンスがいいし、作品のチョイスもセンスあるなぁって。

天神
そうだね。次また観たいって思うもん俺。び~めんはね、俺次観たいと思った。お芝居のパートのやつは。

のと
お芝居のパートのやつ(笑)

天神
お芝居のやつはこれからも観に行きたいなっていうのはすごいあるし。結構(び~めんメンバーさんは)人数もいらっしゃるから。

のと
そうなんですよね。

天神
その人たちも出てて、どうなってるのか。その人たちも含めた、ああいうお芝居が凄く観たいな。

のと
あれで舞台を作ろうっていうセンスの人がなかなか他にはない。

天神
憧れだったりとか、そういうものがないと。世界観が好きとか。それを表現しようと思うっていうところに、基本的にいかないよね、やっぱ。難しそうって思っちゃう。

のと
だから観た時に、うわぁこれ、古典だぁと思って。だから言葉に惑わされちゃいけないよねって思って。古典作品って、そこにとらわれたらだめじゃないっていう。

天神
まあ…言葉、美しいやつはね、難しいよ。

のと
難しい。だからただ見てると、あぁ綺麗だったね、で終わっちゃうから、綺麗だったねの先の何を魅せるかとか、何をお客さんに持っていてもらうかとか、なのかな。

 

――美しい言葉がふんだんに散りばめられた作品をどう魅せるか。難しいからこそ、面白い、のかもしれませんね。

 

 

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★1…2017年3月に劇団フロンティアさんで上演した「みんなの宅配便」。ふたり芝居であり、本番中にそれぞれ台詞が出てこなかったことがあった。そのときはお互いに空気を読みあったり、次のシーンへつなげようと必死にお芝居を続けたりして切り抜けていった。しばしば話題として持ち上がることがあり、その度にその時のことを笑い話にしている。

★2…インプロヴィゼーションの略。即興劇のことで、台本や台詞を決めずに、その場でお芝居を作っていくことである。アドリブ力をつけるために練習として取り入れていることが多い。び~めんぷろじぇくとさんは、この即興劇をそのまま公演として行っている。

★3…1960年代に起こった、商業性を無視した前衛的・実験的な芸術運動。前衛美術や前衛芸術、前衛映画や演劇、暗黒舞踏などが登場した。その担い手として、アングラ演劇では唐十郎率いる状況劇場、寺山修司らの天井桟敷が主に代表される。(wikipediaより) ダークな雰囲気や衣装、顔を白く塗る白塗りなど、一見ぎょっとするような世界感に魅了される作風が多い。


対談写真:紋川あゆみ

対談編集:のとえみ
補足解説:のとえみ